操る楽しさを探求した850ccパラレルツイン。
ツインエンジンの特徴は爆発一回あたりのエネルギーの強さ。そのため低回転域でも充分なパワーが得られ、中低速域からその本領を発揮する。さらに強い爆発力はスロットルを開けた瞬間に駆動力となり、ライダーの意のままにレスポンスするエンジン特性となる。こうしたビッグツインのすぐれた素性に加えて、TRXではパラレルツインがもつ可能性をフルに探求した。TRXのパワーユニットは、パリ・ダカ参戦で実証済みの水冷4ストローク5バルブ並列2気筒エンジン。エンジン前後長が短く、重量物を車体中央部に集中させることができるパラレルツインの利点を生かして、クイックな旋回性を生むショートホイールベース化やマスの集中化を無理なく実現させ、ツインスポーツの操る楽しさを徹底的に追求している。 |
強烈なトラクションを生む270°位相クランク不等間隔爆発。
さらに、こうしたパラレルツインの特性に、ビッグツインらしい強烈なトラクションを与えるため、ヤマハ独自の技術を投入している。それが「270°位相クランクによる不等間隔爆発」。これはクランクの構成を1番気筒に対して、2番気筒を90°ずらした位相に配置。270°-
450°の不等間隔爆発とすることで、トルク変動による力強いトラクション特性を実現。馬のギャロップのごとく抑揚をつけることで、路面を蹴る力を強くしている。エンジントルク曲線のグラフが示すように、ピストンの上下運動によって発生する慣性力が爆発力を打ち消さず、トルクのラインがくっきりとした山を描き、力強い爆発力がそのままパワーとなって路面に伝わることがわかる。 |
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エンジントルク曲線(爆発力トルク+慣性トルク)
7,500r/min時 |
高回転を実現するDOHC5バルブ&ストレート吸排気。
吸気3、排気2の5バルブとすることで、高い吸排気効率を実現。同時に多バルブ化によるバルブ小径化やバルブステムの細軸化、バルブスプリングの軽量化をはたし、シリンダヘッドまわりのロス馬力を軽減している。さらに吸気バルブのリフト量をアップさせる高回転型のカムシャフトを採用することで、力強いトルクの立ち上がりを実現した。キャブレターはストレート吸気に合わせてダウンドラフトタイプのφ38mm負圧式を採用。急激なスロットルワークにも適切な空燃比を保つ加速ポンプを装備して、レスポンスを一層向上させている。また温水通路を設け、気象条件に左右されない安定したキャブレーションをはかった。さらに点火システムには3次元マップ制御式イグナイターユニットを採用。エンジン回転数とスロットル開度の両面から最適な点火タイミングを割り出し、連続したコーナーなどでも素早くレスポンスするエンジン特性を実現している。エキゾーストシステムはアップタイプの左右2本出し。太いエキゾーストパイプと大容量サイレンサーにより、9.8リットルの排気容量を確保し、重低音の効いたビッグツインサウンドを響かせる。 |
ハンドリングを高める前傾40°エンジンレイアウト。
シリンダーの前傾角を40°にレイアウトすることで、吸排気系の大容量化とマス集中化という大きな利点を獲得している。まずエンジンの前傾によって可能となったエアクリーナーから燃焼室をストレートに結ぶダウンドラフト吸気は、すぐれた吸気効率を実現。しかもスペース効率のいいエンジン上方にエアクリーナーを配置でき、7.1の左右2本出し。太いエキゾーストパイプと大容量サイレンサーにより、9.8リットルという大容量化を可能にしている。また吸気系を上方にレイアウトしたことで、エンジン背面に生まれたスペースにオイルタンクを設置。バッテリーもエンジンに近い位置に搭載でき、重量物を車体中央部に集めるマス集中化を実現。ビッグバイクでありながらも軽快な運動性能を発揮する。また前傾レイアウトによって長くなるエンジン前後長は、ミッションを縦配列にすることでコンパクトに構成。クイックな旋回性を生むショートホイールベース化を成し遂げている。 |
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